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インフレの原因(その3:自家製インフレ)

2014年07月08日 10時12分28秒 | 経済

インフレの原因(その3:自家製インフレ)<2008年5月10日付のリメイク版>
 現実のインフレは複合的要素で起きることが多く、殆どの国では「自家製インフレ」が主流です。しかも、一般的に、最も困ったインフレは実は「自家製インフレ」で、これは始まると永続的なインフレになるか、スタグフレーションになるかで、なかなか治りません。

 「自家製インフレ」というのは日本語で、英語では home-made inflation 「ホームメード・インフレ」です。全く同じではありませんが、「コストプッシュ・インフレ」などとも言われます。つまり、国内で何らかのコストが上昇することによって、製品やサービスの値上げをせざるを得なくなり、インフレが起こるという状態です。

 国内コストといえば、生産の3要素「土地、労働、資本」の要素費用である「地代、人件費、資本費」ということになりますが、地代と資本費を資本費としてまとめてしまえば、人件費(賃金、社会保険料など)と資本費(金利、賃借料、利益など)となります。この中で総コスト(=総要素費用=国民所得)の6-7割を占めるのが人件費(国民経済計算では雇用者報酬)で、通常これが上がることが自家製インフレの原因です。

 もちろん労働生産性(当ブログ2008年4月「付加価値と生産性」参照)が上がれば、人件費の上昇を吸収してインフレにはなりません。しかし何か他の原因があってインフレが起こると、「物価が上がって生活が苦しくなったから賃金を上げるべきだ」ということで、生産性に関わりなく、物価上昇を埋め合わせすべきだということで賃金が上がり、自家製インフレを起こします。典型的な「賃金コストプッシュ・インフレ」ということになります。

 前回のブログでも触れた第1次オイルショックの後のインフレは、まさにこれで、石油値上がりのパニックで、物価が年率22パーセントも上がったことが大幅賃上げ(33パーセント)を呼び、輸入インフレを自家製インフレにつなげてしまったのです。このインフレは、その後、労使の理性的な話し合いで4-5年かけて解決に至りましたが、これには 後日談があります。

 長くなりますので、後日談はまたの機会にしますが、自家製インフレの最大の問題は、当該国ではインフレですが、他国はインフレではないということで、その国の国際競争力が落ちてしまうことです。
 日本でも、近年政府が、デフレ脱出最優先で、無暗に「賃上げをしろ」と掛け声を掛けますが、寒いからと言って暖房をし過ぎるような政策になりかねません。

 賃金(正確には人件費)コスト上昇を生産性上昇で吸収できれば、自家製インフレにはなりませんから、政府の言うインフレ・ターゲット2パーセントというのは、理論的には、日本経済全体の生産性上昇率よりも人件費上昇率の方が2パーセント高くてもいいという事です。
 しかし、通常自家製インフレは次第に加速するというのが世の常です。

 連合も来年は消費増税で消費者物価の上がった分を賃上げで取り返そうと主張する可能性もあります。それに輸入インフレ分が加算される可能性も出て来るかもしれません。


 

経済成長(実質)と整合的な範囲でこれらの問題については、このブログでも何回か触れてきましたが、インフレは、その原因と影響範囲を良く見極めないと、じわしわと経済を悪くしてしまう大変厄介なもののようです。
 



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